照らす月・映す月・欲望される月

余談だが、月は人の心を素直にさせるという意味では、こちらの映画も紹介しておきたい。

『ムーンライト』(2016年)

幼少期から親友同士で育った二人の、少年期から青年期にかけて変化する優しさや思いやりを描いた作品、とでもいえようか。弱く優しい少年だった主人公が、犯罪をきっかけに極めてマスキュリンなギャングスタとして成長するのだが、そうした「強い男性」を演じてしまう本当の理由は主人公の本来的な「弱さ」のほうにある、ということが、大人になった親友の思いやりによって明らかになるという成長物語である。スラムで育つ子供の環境を生々しく描いている点も重要だが、月夜の浜辺で登場人物が偽らざる自分自身と向き合うシーンが何よりも印象的な作品だ。この作品を見ると、友情と愛情が連続的なものであるということを強く思わされる。