近況雑記—チェルシー・アナログ・hyunis1000

 10月11日に元町のカレー屋「PUB CHELSEA」でUG Noodleとしてのソロ・ライブがあった。同店にて個展を開いているイラストレーター・mannaさんとの共同企画で、同じく元町のお店である「1987」のDET-CHINにDJを、ちいこちゃんにフード出店をお願いしつつ、弾き語りとカラオケの2ステージで演奏した。チェルシーのカレーは本当に美味しい。カレー好きとして、美味しいカレー屋で演奏させていただけるのは光栄なことだ。新装チェルシーの洒脱な空間にDET-CHINの抜かりない選曲が映えに映え、ラグジュアリーとストリートが交錯する魅惑のラウンジ・パーティーだった。

manna さんデザインによるフライヤー

 UGソロとしては、12月に7インチ盤「夢の恋人 (Lovers Rock Edit feat. seizo) /ポリュフェモス」が出る。3月にリリースしたアルバム「ポリュフェモス」からのシングルカットで、JET SET / RC SLUM両レーベルのダブルネームによるリリースとなる。アナログ盤を出すことはここ10年来憧れ続けてきた目標だったので、まさに夢見心地だ。

 一応あらためて記しておくと、この「夢の恋人」には都合三つのバージョンがある。一番はやく発表されたのは sumahama? 名義によるミュージック・ビデオのもの。sumahama? のアルバム「demos?」に収録されたものには seizo のボーカルが入っており、ミックスも MV のとは異なっている。楠田が担当した sumahama? 版のドラムをのぞいて、演奏はすべて UG による。

 今作の発売に合わせて、12月にまた演奏する機会があると思う。感染症のことで思うように立ち回れないのは仕方がない部分もあるけれど、またみんなで遊べたらいいなと願っている。

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 最近は同じ神戸のヒップホップのグループ・Neibiss と、そのメンバー・hyunis1000 の音源をよく聴いている。

 僕はこのジャンルの専門ではないので大したことはいえないけれど、ヒップホップを通って成長してきたことは幸運だった。ヒップホップには現代を生きる手掛かりがたくさん詰まっている。不可視化されている現実の風景や、存在しなかったことにされている思想をつぶさに拾い上げて音楽に乗せるという仕事と真摯に向き合い続けているヒップホップのクリエイターたちは偉大である(もちろん「ヒップホップ」にだっていろいろあって、全てが最高というわけではないけれども)。

  hyunis1000 は、時にあまりよくない方向へと急速に変化しつつある元町界隈の空気を肌で敏感に感じていて、それを語るためのオリジナルな言葉を持っている。なにか得体の知れない強大なものがこの街全体に不穏なムードをもたらしている、そうした雰囲気の中でしかしわれわれは何不自由のない顔をして恋をしたり、夢を見たりして暮らしているわれわれの「日常」に対する強い違和感を彼は見逃さない。街を覆う何ものかについて勘繰る自分、そうと感じながらも空気を読んでいる振りをする自分、その矛盾と葛藤を超越的な視点から見つめる自分。それらすべてのまなざしが、hyunis1000 の表現にはある。

 答えはないが闇雲には曲げない、創り続け、踊り続けることを通じてこの分裂スレスレの自我を保つこと、そのすべては世界に食い潰されないための闘争であり抵抗である。